「「五万人が死んだ」ではなく「一人の人が死んだ事件が五万件起きた」」
と「裸の王様」で語っていたのは、ビートたけしだった。
「死んだ奴はもう何もわかりゃしねえんだ。残った人間が痛いんだ。」
と「ぼくんち」で語っていたのは、西原理恵子。
どちらも死について真っ正面からとらえた、重い言葉だと思う。

「おくりびと」の主人公である大悟は、失業の後、納棺師に再就職する。
仕事の内容は”安らかな旅立ちのお手伝い”。
タイトルにもなっている「おくりびと」として、
大悟が故人、そして遺族と触れ合う様を描いた、非常に素晴らしい作品だった。

この映画でメインとなるのは故人が亡くなるシーンではなく、
残された遺族がその親しい人の死を受け入れるシーンとなっている。
特筆したいのは大悟が多くの納棺に携わり、流れるように時間が経っていくシーン。
時間経過を表現しているかのように見せかけ、
その一つ一つ葬儀の遺族の一人一人にドラマを感じることができる。
死、というのは一つの悲しみではなく、その周りにいる人一人一人にある、
とてつもなく多くの悲しみの集合体なのだ考えさせられたシーンだ。
冒頭に述べた二つの言葉を思い出すとともに、
納棺師が旅立ちのお手伝いをしているのは、家族に対してなのかなとしまった。

鑑賞中、涙が止まらないシーンが多々あった。
ただそれはね、感動的なのではなくて可哀想だったから。
これからこんな悲しみを乗り越えないといけない自分が。
今後、死を現実的に考えていかないといけないんだと思わされる、
素晴らしい映画だった。
まだ観ていない方は、是非。